新たな765日目

「♬なにがなにしてなんとやら~、ものがものまでものとやら~」と何度もこの文句を唸っているのだが、なかなか巧くいかない。これは浪曲の基本となる七五調。節と啖呵、そうして曲師の三味線が合わされば、情味溢れる世界が広がってくるのだ。この浪曲、明治後期から昭和の中期にかけて一世を風靡していた。桃中軒雲右衛門、広沢虎造、天中軒雲月などの名前は知らなくても、設定がこの時代の映画やドラマで、ラジオから流れてくる清水次郎長伝の一節を耳にしたことはあるのではないだろうか。それがなければ、「♫ハア~あの日ローマで眺めた月が~(ソレ トトントネ) 今日は都の空照らす~(ア チョイトネ)」と始まる三波春夫の「東京五輪音頭」、「♪吹けば~飛ぶよな将棋の駒に~」と歌う村田英雄の「王将」、「♩逃げた~女房にゃ未練はないが~お乳欲しがる~この子が可愛い~」は一節太郎の「浪曲子守唄」、これならご存知だろう。どれも浪曲師から歌手へと変身を遂げたひとだから、浪曲テイストは味わえる。この浪曲を生で聴きたいと思ったら、どうすればいいか。実は東京で唯一となった浪曲定席「木馬亭」というのが浅草寺のすぐ近くにあるのだ。たまには、日本近代の大衆文化に触れてみるのも悪くない。帰りにモツ煮込みを肴に焼酎の一杯でもやると、レトロな世界がさらに広がるというものだ。ほろ酔いで一節、「♬なにがなにしてなんとやら~」。寒声なんて修行もしてないものにとっては、なかなか虎造のような渋い声は出せやしない。

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