新たな736日目
だって女の子ですもの、寂しくって心細い夜だって、たまにはあるわ。たとえば、ねじめ正一の「荒地の恋」を読んだあと。主人公は荒地派の詩人・北村太郎。50代半ばにさしかかり定年も間近。それがこともあろうに中学以来の親友・詩人の田村隆一の妻・明子と恋に落ち、家を出て貧窮の同棲生活を始めるの。彼らの地獄はこのときから始まったのよ。こういう話は、この詩人の作品を知って読むと、とにかく切なくて、ある部分では彼の不条理を認め、またそれが恐ろしくもあり、不安でもあり、わたしの心のバランスを狂わせるの。そうなると、もう誰かが傍にいなっくちゃ、なかなか寝付けそうもないの。たとえ小さな音でも夜の静寂に響けば、もう心臓が激しく鼓動を打ち始めるから、今夜はジェイクの部屋にお泊まりすることにしたわ。ちょっと狭いけど、その分、肌の温もりが伝わってくるから、かえって落ち着く。それに、普段はとっても嫌なのだけど、ジェイクの寝息が激しい鼾に変わっても、むしろ守られているのだと実感できるからいいの。これでようやく、眠りに就けそうだわ。でも、涙は止まらないまま。
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